とある飛行士への追憶
犬村小六
小学館/2011年
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「とある飛空士への追憶」という物語は、身分が低く差別を受けている、パイロットの狩乃シャルルとレヴァーム皇国皇子の許嫁のファナ・デル・モラル。この二人の空戦と身分違いの恋の物語である。
私はコミカライズ版から「とある飛空士の追憶」を知った。
小川麻衣子さんによる優しいタッチで描かれ、全四巻で完全漫画化されている。
キャラクターたちが生き生きとした表情によって描かれ、その場その瞬間の空気感を感じ取ることができる。
私は漫画を読んで、小説が原作だと知り小説も手に取った。
小説では端麗な言葉で物語が進んでいく。
この作品は新書にて加筆修正されており、ライトノベルに少し抵抗感がある人でも読むことができる。
ここからは私の、この作品から感じたことを書いていく。
まず、私は王道が好きだ。王道な物語が、とても好きだ。
主従関係が結ばれる話や、姫と勇者の恋愛とかも好きだ。
そんな私が、この作品を好きにならない訳が無かった。購入する前にレビュー等を見ても、「王道な物語」だと書かれている印象を受けた。つまり、私の好みという事だ。ためらいもなく購入した。
読み進めていくにつれて、実に自分好みな展開が続いていく。
しかし読み終わったとき私は、これは本当に王道だろうか? と感じた。確かに、ストーリー展開は王道だろう。しかし、何か少しだけ違う気がしたのだ。
最後、私は続きが欲しいと思った。私の抱くこのもやもやに、ストーリーとしての答えが欲しかったからだ。
そして、「とある飛空士への夜想曲」という本が出ていることも知った。
この本は、「とある飛空士への追憶」にて描かれた、敵サイドが主人公の物語だった。こちらも王道に近いストーリー展開で、「とある飛空士への追憶」を読んでいるからこそより分かる物語の奥行に圧巻された。終わりが明確にないからこその良さがこの本にはあるのではないかと感じた。
鮮明に見える風景とは裏腹に、最終的な彼らの行方は読者に明確に伝えられない。それがこの「とある飛空士への追憶」という物語の良さだと。「とある飛空士への追憶」は、アニメーション映画化されている。私はまだそちらには触れられていないので。今後購入してみてみたいと思う。
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