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僕がコントや演劇のために考えていること

小林賢太郎

幻冬舎文庫/2014年

  • 読み手:  まつもとみゆう

     小林賢太郎の脳みそをのぞいてみたい。そんな好奇心から選んだ種本で、たびたび登場するキーワードを発見した。「面白い」「面白さ」「面白く」といった、「面白」という言葉だ。
     ばかばかしいほどに笑えるものもあれば、ぐっと意識を集中させて観た後にじっくりと考えさせるようなものもある。それでも小林賢太郎の作品は、わたしにとってどれも確かに「面白い」。種本を通し、なるほど小林賢太郎の意図するままに「面白さ」を感じていると知ったわたしは、ふと焦燥感を抱いてしまった。
     やばい、この本のジャンルがわからない。
     書店でアルバイトをし始めてから、ジャンルキーなるキーの存在を知った。「文庫」や「実用」などに振り分けられたうちのどのジャンルに属する本が売れたのか、レジやレシートに記録するためのキーである。実はわたしは、この作業が苦手なのだ。形や価格表示で明瞭な場合は問題ないのだけれど、表紙や作者、分類コードを参考にしてもピンと来ない場合、つい手を止めて迷ってしまう。
     鍵盤を押した瞬間に「間違えた」と気づくことも多い。むしろ悩んだ時に限って、押した直後にミスを悟るのだ。経験を積むにつれて少しずつ慣れてはきたものの、慣れほど怖いものは無い、というのが本音でもある。
     種本を前にしたわたしは、どのジャンルキーをたたくべきか。コードに基づけば「随筆」となるけれど、いわば小林賢太郎の方法論が書かれている点を踏まえると、「実用」とも捉えられる。しかし、その方法論はハウツーというよりもあくまで小林賢太郎自身の思考にすぎないので、やはり「実用」ではないかもしれない。考えるうちに、もはやそのジャンルの曖昧ささえ小林賢太郎らしい気がしてきた。種本のなかで自らの職業を「小林賢太郎」と述べているように、肩書きやジャンルにとらわれず、ただ「面白」に取り憑かれた人が書いた本なのである。ジャンルなんて、考えるだけ無駄なのだ。
     論より証拠ということで、まずは小林賢太郎の作品に触れてみて欲しい。ラーメンズ、小林賢太郎テレビ、カジャラ、こばなしけんたろう、エトセトラエトセトラ。手軽に触れられるものでも、「面白そう」と感じるものでも、その入り口は自由に開かれている。
     嘘か真かよりも、「面白い」か否か。小林賢太郎にとっては、それがすべてなのだ。

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