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薮内久美子

 本を読みました、と成人済の人間が言ったとして、たいてい思い浮かべるのは本屋の日本文学のコーナーや、新書コーナーに置いてある本だと思う。実際私がそうだ。
 小学生の時分は競うように児童向け書籍を読んでいたはずなのに、気が付けばいつの間にか読まなくなっていた。児童向け書籍が置いてあるコーナーすら、気恥ずかしさがあって近付かないようになっていた。
 また読んでみよう、と思ったのは、一年のころ授業で児童文学を学んだからだ。読む側でなく、書く側になると児童文学というものは意外と難しい。自分も子供だったはずなのに、子供が楽しめるような話が一気にわからなくなる。
 今年の本棚企画には絶対に児童向け書籍を買おうと企んでいた。去年の冬くらいからだ。児童向け書籍をたくさん買って、本棚に並べて展示してやる。本棚の名前もすでに決めていた。「小学生の本棚」去年の冬くらいからだ。
 しかし、コロナ禍。本棚企画もめちゃくちゃだ。実際に本屋に行くことができないからだ。憎むべきコロナによって、私の計画はすべて台無しになってしまった。
 この『僕らのハチャメチャ課外授業 一発逆転お宝バトル』は、せめて児童向け書籍を一冊は買ってやろうという私の意地だ。表紙と挿絵は私が敬愛しているイラストレーターが描いている。選んだ決め手がそこだ。
 自分が小学生のころ読んでいた児童向け書籍は、タイムスリップしたり、世界のどこかにワープしたり、親子で妖怪を退治したりして作中の事件を解決していた。
 この作品は、もっと狭い規模で話が進む。学校の中。しかも、授業の一環だ。
 ずいぶん規模が小さいな、と最初は舐めていた。しかし、知識と知恵をフル回転させてお宝バトルをする少年たちの熱さに、読んでいてこちらまで熱くなってきてしまった。まるで土日の朝にやっているホビーアニメを見ているような気分だ。わかりやすいストーリーなのに、そのストレートさが良い。
 気付けば私は続刊の『僕らのハチャメチャ課外授業 一発逆転お宝バトル 帰ってきた超危険人物!』を調べていた。いったいどんな危険人物が帰ってきたのか気になってしまう。
 今まで自分は児童向け書籍を買うことに気恥ずかしさを感じていた。けれど実際、何を読むか、について年齢はそれほど関係ない。読者対象年齢もあくまで目安にしかすぎず、そこから外れた人間だって、読みたいと思えば読んでもいいのだ。
 大人が児童向け書籍を読んでも、子供が大人向けのハードカバーを読んでも、後ろから読んでも、途中で読むのをやめても、いい。
 たぶん、私が思っているよりずっと本は自由に読むことができる。

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