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上條奈桜-2

 好奇心に終わりは来るのだろうか。
 私は小さい時から本に囲まれる生活だった。とてもありがたいことであるし、中々ない環境だっただろう。
 毎月保育園でもらえる絵本、本棚に入り切らないほどの図鑑や歴史書、親が大切に飾っていた漫画本や小説。
 そのどれもが汚しさえしなければ読み放題だったし、頼めば読み聞かせや解説もしてくれた。そうやって幼少期を過ごしていたからか、私の読書に対するハードルはほとんどないようなもの。小学生、中学生のころは図書室に入り浸っては面白そうな本面白くなさそうな本を手当たり次第に読んでみるという生活をしていた。
 そんな時に出会った本が『万能鑑定士Qの事件簿』である。
 裏表紙のあらすじには知恵がつく、人が死なないミステリなどと書かれているではないか。
 なんだこれは!
 これが私の初めて本を見つけたときの感想である。
 文庫本サイズで、知恵がつく?ってなんだろう。そもそもタイトルにアルファベットが使われていてそれもしっかりと気になってしまう。
 当時からミステリーなんてほとんど読んだことない私であったがついつい手が伸びる。
 やめておけ、事件簿って言うくらいだからきっと中身は難しいぞ、という私の心の声と、みぞおち辺りが沸騰するような期待感が相反するのだから困ったものである。
 気づけば私はその本を借りていた。結局、好奇心には勝てなかったのである。
 作品名から鑑定士という名前が出てくるとおり、主人公は鑑定士で、それ故に知識としてたくさんの古物、鑑定方法に関するものが出てくる。そしてそれらの情報を駆使して依頼人の謎を解いていくのである。
 私の今まで知らなかった分野の知識。恐らくこれから日常的に使うことはないだろうとは思うがこれが全くおもしろい。
 そもそも鑑定士って何するんだろう、ぐらいの情報から入ったものだから、一つの作品に出てくるたくさんの知識のために、何度か読んでやっと何となく分かった程度だった。そのためまた違う参考書などで少し調べたりして知識を補完したのである。この知識はなくても十分に面白く読める本ではあったが、この本によって知識欲が刺激された結果であった。
 知らないことを知るのは楽しい。やはり好奇心に終わりなどなかったのだった。
 そして、この本は私の新しい分野への好奇心を誘ってくれた一冊だった。
 

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