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LoveLetter

おーなり由子

大和書房/2004年

  • 読み手:  中嶋怜未

     愛していた人への「好き」という気持ちが消えてしまうのはどういう時なのだろう。
    今年、ラジオドラマの脚本を書くときにテーマにしたことだった。どうして愛が消えてしまうことがあるのだろう。どうして運命の相手だと思って結婚した相手と別れてしまうんだろう。好きという気持ちが続くにはどうしたらいいのだろう。
     その好きという複雑な気持ちについて考えさせてくれ、「あぁ、だから好きなのか」という答えをくれる『Love Letter』という絵本に出会った。
     この作品とは「すき。言葉にすると胸がいたくなるのはどうしてかな」というコピーに惹かれ、興味を持ったのがこの本との出会いだった。好きという気持ちがなくなることについて答えを出すには、反対の意味の好きになる理由や好きになる理由について知れればわかると考えた。
     絵本は、見た目が少し変わっていて、誰にもいいところを分かってもらえない恋人に対し、私はこれだけいいところを分かっている。私の悪いところも受け入れてくれ、彼の弱いところも受け入れることが出来る。それが好きということだよね。というような内容だった。
     この本で、私が好きな一節は、一つは先ほども書いたコピーにもなっている
    「すき。言葉にすると胸がいたくなるのはどうしてかな」
     二つ目は、
    「風船玉みたいにふくらむきもち いつかこわれてしまう時がくるのかな」
    という一節だ。
     一つ目の文が好きな理由は、『好き』という気持ちは恋人などに限らず、愛おしい友達や家族にも抱くことがある感情で、その想いは甘い愛おしさだけではなく、好きという言葉だけでは言い表せない切なさ、愛していても手が届かない悲しさ、好きだけど、一番にはなれない悔しさ、片思いの時期を思いだすと溢れてくる苦い痛み。そのすべてが好きという感情から派生されたもので、好きという気持ちは決して優しく甘いだけではない。決して軽い言葉ではないからこそ、言葉にするだけで胸が痛くなってしまうんだ。ということがこの一説に込められていて、改めて好きという言葉を物語で表現するときはそこに込めたい感情や意味をより深く考えようと、改めて思うことが出来たからだ。
     二つ目の理由は、どうして愛が消えてしまうのかなと考えたことがあるからだ。好きな人への気持ちが消えるのは一瞬だ。どんなに今まで好きだった相手でも、たった一言の言葉や一瞬の行動一つで気持ちが合冷めてしまうことがある。それは本当に風船が割れる時のようで、どんなに大きく膨らんでいてもあっけなく割れてしまうのだ。
     だが、これは本当に二十年生きてきた中で片手で数えられるくらいしか恋愛をしていない私の、偏った意見だが本気で相手のことを好きではない。または好きなのだと思い込もうとして好きになった相手には、気持ちがなくなってしまうことへの恐怖を抱くことはないのだと思う。今、私はやっと心から大切に思う恋人に出会えたから、この一説にとても心を揺さぶられたのだろうと思う。
     誰かに恋をすると、センチメンタルな気分になってしまうのは、私だけではないはず。愛する人へ気持ちを伝えたいけれど、言葉を紡ぐのはとても苦手。という方はぜひこの本を愛する誰かへプレゼントすることをおススメする。
     いとしい心が、そのまま手紙になって誰かに届きますように。
     誰かを愛したことがあるあなたへ。

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